Dear ブラッド・ピット
あなたを初めて見たのは『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』 でした。
この作品はアン・ライスの、やや難解なファンタジー・ホラーが原作だったせいもあって、デビット・リンチにも通じる映像美学は感じましたが、それほど二大美男俳優―トム・クルーズとの競演でしたね―に魅力は覚えなかったように記憶しています。ごめんなさいね。
ひたすら病的で、妖しく、美しいあなたでした。
私は本来男性の美しさというのは、雄の本能が優先する、若さゆえではなく、善悪を問わぬ高揚した魂の輝きが、容姿に反映されたときだと思っています。
その意味では清く正しく信念に生きる男達も勿論美しいのですが、時に野心家の政治家や成功した事業家なども、素晴らしく魅力的に見えるものです。
これはもう、男だけの特権で、産みの美しさに象徴される女性美とは本質的に異なるものだと思います。
正確に言えば、美しく老いる女性は存在しません。ただ見苦しくなく老いることに成功しているだけなのです。
一方、私があなたの輝きを見たのは、モーガン・フリーマンを迎えて大当たりした『セブン』 でもなければ、多くの人たちが褒め称える『スリーパーズ』の検事役でもありませんでした。
あなたが凡庸な若者の肉体を乗っ取って、つかの間の娑婆を生き、ちゃっかり恋までしてしまう死神役を演じた、ファンタジー・コメディー ホラーの傑作、『ジョー・ブラックによろしく』こそ、私はあなたの真髄そのものだと思っています。
ややもすれば長く感じる作品でしたが、大変感動したものです。
この作品で私が何より案じたのは、名優アンソニー・ホプキンスにあなたが位負けするのではないかという事でしたが、杞憂に終りました。ホプキンスも素敵でしたが、あなたの方がより魅力的でした。
あの作品はもはや、あなたなくしては成功し得なかったものと思います。
なぜかというと、あなたという肉体のオブジェは人間性の善悪、生と死に象徴される人生の明暗、ひいては人間存在の全ての要素を美的に力強く、かつ繊細に表現する事ができるからです。『ファイト・クラブ』のラストシーンまでもが、その事実を如実に物語っているように思います。
あなたの演技は太陽です。
あなたが演技によって人間の歓びや過酷な運命を振り子のように行き来する時、持ち合わせているのびやかな四肢と明るい表情さながらに、まぶしく暖かい光が周囲を癒すのです。
最後に実は私は『セブン・イヤーズ・イン・チベット』 のあなたが最高に好きなのです。
なぜかと申しますと、あれには女性が出てきませんから(笑)。それにやんちゃ坊主の冒険家の役どころは古典的ではありますが、あなたにぴったりのような気がしてなりません。
もしかしてあなたは日本の時代劇に出演したとしても、さほど不似合いではないかもしれませんね。
